薬膳料理について

「難しい」「薬くさい」など
薬膳に対してあやまったイメージを
持ってしまってはいませんか?


知ってみれば意外と簡単で、毎日の生活に気軽に活かせることが多いのが「薬膳」。基本程度でOKですので薬膳の知識を身につけられ、その上で食生活の改善に挑戦してみてください。きっとより楽しく、より大きな効果が得られますよ!

薬膳とは

 わたしの提案する薬膳は、身近な食材の組み合わせだけで作る、お母さんの愛情料理のことです。ほんの少しの知識と手間と愛情で健康維持ができるという、古人の知恵を生かした料理学です。食事で余分なものを解毒したり、足りないところを補ったりして、カラダ全体のバランスを整えることによって健康維持ができるのです。生薬を使った料理というイメージがまだまだ残っているようですが、決してそういうことではありません。人間のカラダは自然の一部です。また食品も同じく自然の恵みです。病気になる原因は、人が自然に追いつかずにバランスを崩すと考えます。自然に逆らわずに、仲よくする。どのように共存すれば健康を保つことができるか、ということを考えて食生活を送ります。

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薬膳の由来

薬膳の目的  昔、中国では「食医」がおりました。これは、どの医者よりも位が高く、宮廷に遣え、一国の主の健康管理を任されていたそうです。「薬食同源(医食同源)」の言葉のとおり、食事も薬も根源は同じという意味があるように、このような古人の知恵を教え伝えていくことに食育の最重要課題が見られると私は思います。食べ物を捨てるところなく丸ごと食す「一物全体食」、その土地で取れたものがカラダを養ってくれる「身土不二」、旬の食材も病気予防には欠かせません。 病気になってから治療するのは、のどが渇いてから井戸を掘るようなもの。と言います。病気になる前に予防することは、とっても大切なことなのです。 あなたとあなたの大切な人が健康でありつづけ、そしてその笑顔がずっと続きますように。そう願い、今日もわたしは薬膳をおすすめします。

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目的は体質改善です

 未病(身体の不調)があると、カラダはSOSを発信します。その信号を見つけ、原因を調べて、足りないものを補い、不要なものを排出させて身体のバランスを整えると、心身は健康だった頃の元の姿に戻ります。これを体質改善ともいいます。例えば「最近疲れやすい」というような時、単純に疲労回復に良い食材をいただくのではなく、血流が滞っているから?消化不良のため胃腸にエネルギーがいるから?など、なぜ疲れやすいのか原因を探ります。そして、何を摂取するとバランスがとれるか、組み合わせは何が良いかなど、食べる人の体質・体調に合わせた食事を考えます。自分の体質を知り、食材を組み合わせることで体質改善を図ります。

体質改善の目的 その1・・・自己治癒力を高める
 東洋医学では、体内に邪気(病気の原因になるもの)が入り、カラダの中で戦います。しかし、それに負けてしまうと病気になるというふうに考えます。気を補って自己治癒力を高めれば、病気に負けないカラダになるということになります。

その2……解毒
 病気の原因の多くは「食べすぎ」によるものと考えています。「いつでも、どこでも、なんでも」食べることが氾濫すればするほど、生活習慣病患者は増える傾向にあります。そのため血流が滞ったり、むくんだり、デキモノや腫瘍を作ったりして、苦しむことがないように、薬膳では「解毒」することを大切に考えます。

その3……おいしい
 「おいしい」と感じるそのとき、心が満たされ、幸せな気持ちになりませんか?唾液の分泌も良くなり、消化が良くなるので、病気になりにくいカラダが作られます。毎日食べる食事が「おいしい」ことは元気の基本で、さらに「元気」は、健康でいることの基本です。

その4……手軽・カンタン
 入手困難な食材や高価な食材など、特別な食材を使っていては長続きしません。薬膳と聞くと特別な生薬を使った料理というイメージをお持ちの方も多いようですが、実は身近にある食材には日頃の健康管理ができるものがたくさんあります。その効果的な利用法も、日々ご紹介しています。

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陰陽

 世の中のすべてのものは陰と陽によって構成されているという考え方があります。陰=沈静・冷え、陽=活動・熱というイメージです。体が陰のときは陽の性質をもつ食材を、逆に身体が陽のときは陰の食材で補い、身体のバランスを整えます。このバランスが崩れるとさまざまな症状が出てきます。人間も自然の一部なので、食べ物、季節、環境、風土とも大きな関わりがあります。

例えば……


【果物】
 甘くて食べるとホッとするのは、陰のはたらきのおかげです。しかし寒性食材が多いため、食べ過ぎるとますます冷えが助長されるということになります。冬や冷え症の方は控えめに。適量をいただきましょう。
【生姜】
 これも手軽で、血流をよくしたり、消化を促進したり、むくみを解消したりと薬効は豊富ですが、陽=温性食材です。手足が冷える方でも身体に熱がこもってイライラしやすかったり、目が充血するなど、熱こもりタイプには「薬」にはなりません。たまには良いでしょう。

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 季節ごとに出回る旬の食材にはそれぞれ、その季節の環境に合わせて体調を調える性質があります。

【春】
冬の間に動きの鈍った身体を刺激し、溜まった老廃物を体外に出す、代謝を高める性質の食品が出回ります。
例)苦味のある山菜・豆類など

【夏】
暑さから身を守り、熱を冷ましたり、利尿作用のある食品が出回ります。
例)トマト・ナスなどの水分、酸味の多い食品

【秋】
中庸の性質をもつ、貯蔵のきく冬じたくのための食品。空気が乾燥する季節なので、のどを潤す食品、お肌を潤すはたらきのものも多く出回ります。
例)穀物、種実、芋類等でんぷん質のもの。

【冬】
身体を温める食品や生命力を養う食品。
例)ねぎ・白菜や根菜類

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五味・五行

わたしたちの祖先が作り上げたカラダと環境との関わりを表にまとめたものです。古人が季節の移り変わりや星の動き、人の顔色、臭い、排泄物などを観察し統計したものといわれています。
五行
木・春・肝・青色・酸味・胆・目・爪・筋……
「肝」に異常がある場合、顔色が青色になり、爪や目に不調が表れることがあります。「肝」とは解毒、栄養の貯蔵機能です。酸味の食材をいただくことで、改善されることがありますが、その反面、酸味の摂りすぎで不調になっているという場合もあります。

火・夏・心・赤色・苦味・小腸・舌・汗……
「心」に異常がある場合、顔色が赤くなり、舌や汗にSOS信号が表れます。血流や精神状態と関与しています。苦味の食材をいただくことで、改善されることがありますが、その反面、苦酸味の摂りすぎで不調になっているという場合もあります。

土・長夏・脾・黄色・甘味・胃・口・唇……
「脾」は主に消化器系をあらわします。異常がある場合、顔色が黄色になり、口に信号が現れます。甘味の食材をいただくことで、気力がわきますが、その反面、甘味の摂りすぎで疲れやすいという場合もあります。

金・秋・肺・白色・辛味・大腸・鼻……
「肺」は、呼吸、大腸、と関係していて、白い肌の人は肺を大切にする必要があります。乾燥に注意しましょう。また、ぜんそくや鼻炎、花粉症などアレルギーとも関係があります。辛味の食材を料理のアクセントとして上手に取り入れることで、改善されることがあります。辛味の摂りすぎは不調を呼びます。

水・冬・腎・黒色・塩辛味・膀胱・耳……
「腎」は水分代謝と関わり、尿や生殖のコントロールもします。「気」を蓄える場所でもあるので、元気がなくなると顔が黒色になります。塩辛味とは海草類や発酵食品などが含まれます。いただくことで、腎を養いますが、摂りすぎると高血圧などの注意が必要です。

五行の用語解説と五行色体表はこちら

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気血水

この考え方も大事なポイント。これらは絶えず全身を巡り機能を維持・活性化させ、五臓六腑の機能が互いに調和した状態を保つために欠かせないものと考えられています。

気は「陽」に属して体を温め、血液、体液を巡らせ体中に栄養を与え免疫力を保つなどの働きを持ちます。これが滞ると、イライラ、憂鬱、くよくよ、血行が良くない、お腹が張ったり、便秘と下痢を繰り返したりします。高血圧の赤ら顔は気が昇りすぎた状態。気が不足すれば疲れやすい、息切れといった状態になります。

血は「陰」に属して、血液や思考のことを指します。血のめぐりが悪いと各臓器の働きも弱くなり消化吸収機能も低下します。さらに、うっ血状態が気の巡りにも悪影響を与えるという悪循環が起こります。血が虚するとめまいや髪の異常が起こりやすく、思考力・判断力の低下、不眠などの原因にもなります。

水は「陰」に属して血液以外の水分、尿や汗、リンパ液などがあります。水は血液と絶えず交換しあっていて、体液のめぐりが悪くなったり体内の水を処理しきれなくなったりすると水が溜まり、むくみやアレルギーなどを引き起こす一因となるため「水毒」といいます。水が不足すると乾燥状態となり乾燥肌、目の乾燥、空咳などの症状が出やすくなります。

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